君はいつも中庭の一番大きな桜の木の上で短いスカートを風邪に踊らせながらすやすやと寝ているよね。枝が多くて職員室や近くの教室からは見えないって言っても僕のテリトリーの屋上からは実は丸見えなんだ。しってたかな?群れることが僕は大嫌いだからテストなんて出席しない。勿論日頃の授業なんかもってのほか。それでも進級できるのは風紀委員の特権であり義務教育という現場だからだ。例え今此処で今年最後の学年末のテストを受けようが僕には子供向け64ピースのパズルを解くよりもたやすいことだから。きっと君もそう言う思で中庭の木の上で寝ているんだろう。屋上から中庭の桜の木ばかり見ていたら風が吹いた。もうほとんどなくなった桜の花びらを撫でるような優しい風。少し熱気を帯びている湿った風は初夏の訪れを告げるものだ。夏が来る…、そう思うと僕は取り合えず学ランで過ごすのには辛い季節になるなと言うことだけ、ブレザーを普通に着るよりも学ランを着た方が威厳というか、すぐ風紀委員って分かるから楽なんだよ。まぁ例えシャツだけとかになっても雑魚相手には外に出ないよ。面倒くさいし、それに草壁を始めその他の風紀委員(下っ端)がどうにかしてくれるだろうし。僕はその間応接間にクーラーを入れてコーヒーでも啜っていればいいのだから。…………あ、君が気怠そうに体を起こした。体を伸ばして欠伸を一つ漏らしてだらっと体の力を抜く。虚ろな目をして何処か遠くを見ていた。そんな君を見ていたら風が吹いた。風は夏を確実に運んできている。



君は虚ろな目をしたまま上…僕のいる屋上を見上げた。僕と目が合うと慌てて会釈をした。なんだかそんな君が可愛くて僕は笑いながら手をヒラヒラと振った。(貴重だ)君は教師が此方を見ていないか辺りをキョロキョロと見回して誰もいないことを確認したら桜の木から軽やかに飛び降りる。ふわっと君が舞ってそれに呼応するかのようにスカートもヒラヒラと舞った。慌てていたのかスカートを押さえることもしていない君。後でこちらからはスカートの中身が見えていたことをちゃんと報告してあげないとね。足早に(というかバタバタと走りながら)校舎に入っていく君。もしかしてそのまま教室に行って授業を受ける気なのだろうか。きっと君はそうはしないとおもうけど、万が一そんなことになったら少し残念だ。伝えられないし確認もできないじゃないか君のスカートの中の黒い下着を。



夏を運んでくる風を肌で感じながら僕は空を仰いだ。羊雲がゆっくりと自分達のペースで流れている。群れているよ殺されたいの君たち。なんだかそう羊雲に言いたくなった。(でも届いたりはしないんだよ大声を張り上げても。)ふぁ…と欠伸を漏らして僕はフェンスを背もたれにして目を閉じた。屋上で太陽の光を浴びながら寝られる一番気持ちの良い時期だから。学ランの黒が暖かい光を吸い込んで、心地よい。風はいつの間にか止まっていて太陽はサラサラと暖かい光を零していた。(最高だ)



ギィ…不意に錆びた扉を開く音がする。(不意に、っていうのは間違いで実は僕はずっとこの音を待ちわびていたのかもしれない。)草壁達が雑魚を倒した報告にでも来たと思って僕は目を閉じたまま言葉を待つ。(一番妥当かも知れないけどそれは期待はずれの言葉で、)……結局何も声はしない。でも草壁とは違うけれどたしかに『人』の立っている気配が僕にはする。チラと片目を開けてドアの方を見る。さっき慌てて走っていた…君がいる。息を切らして顔を少し赤らめている。わぁなんて可愛いんだろうこの人は。きっとサボってごめんなさいの報告に来たのかな。君は正直な可愛い人だ。でも普通なら授業に戻るか、逃げるのが妥当だと思う。だって相手は僕だもの。無傷で帰れるはずがないって君も知っているはずなのにね。(なに罪滅ぼしにきたの?門前払いだよ。勿論それは君以外。)



「風紀委員長……。」
「どうしたの?」
「あの…授業…サボっててすみません…。」
「別に良いよ…どうせ授業なんてつまらないんだろう?」
「それは…否定はしないけど…。」
「僕だってサボってるんだし。別に反省しなくても良いよ。」




勿論、コレは君だけの特別事項。たった今作った『並盛の秩序:其の九拾参。においては全ての処罰を免除。ただし雲雀恭弥の気分による。』これがあるから君は大丈夫。他人に処罰されたら真っ先にそいつを殺してあげるよ。安心してね。もちろん君以外の人間がサボりなんて許されないんだよ。まず最初に体に叩き込んであげるんだよこの町の秩序は僕であってそれに逆らうことは許されないって。あんまりにも酷かったら血みどろになっちゃうけどね。(でもそれはそいつが悪いんだから)



「だって風紀委員長にサボり摘発された人はみんな血みどろになってるのに…」
「僕の気まぐれだよ。それとも何?血みどろになりたい?」
「…滅相もありません。」




君は少し強張った顔をして肩を竦める。そしてゆっくり息を吐く。僕がふと空を仰ぐとさっきまで群れていた羊雲がいつの間にかずっと遠くへ流れていって……君も僕と一緒に一緒に空を仰いだ。風が君の髪をフワフワと踊らせて、なんだかとても遠い存在に見えた。サラサラとした光を体一杯に浴びて気持ちよさそうな君は手を伸ばせば触れられる距離にいるのに。君の存在を確認したくて口を開いた。



「…。」
「はい?って…なんで名前…」
「そりゃ僕は風紀委員だもの。君のことなら何でも知ってるよ。身長からスリーサイズまで、何でもね。」
「……え」




お風呂にはどっちの足からはいるとか体は右腕から洗うとか、何でもお見通しさ。まぁそれも、君…限定なんだけど。それには気が付いてるのかな?さっきから僕の発言について悩んでるみたいだけど。頭を右に左に捻って…うんうん唸ってる。そんなを見て僕はにこやかに笑ってみせる。そう、今輝いている太陽に負ける気はないくらい。(貴重 だ!)するとは肩を落としてなんでもないです…ってボソボソと呟いた。なぁんだ。つまらないじゃないか。(折角笑ってたのに見てもくれないんだから!)



「そう言えばね、。」
「なんですか風紀委員長。」
「雲雀で、いいよ堅苦しい。」
「雲…雀。」
「良くできました。」
「で、なんですか?」
「今日の下着は黒なんだね」




空気が止まった(ように感じただけだよ)の表情も止まった(これは本当にそうだよ人間って止まることが出来たんだね僕知らなかったよ世紀の発見だね学会にでも持ち込んでみようか)(それはむりだ)すると見る見る顔が赤くなって終いには発火しそうなほどになった。なんてかわいらしいんだ。けれどそんな気持ちは表に微塵も出さないで僕は涼しい顔でを見続ける。何がおかしいんだ?って言いたいような顔してね。ほうら俯いてわなわなと震えだしたよ(比喩表現っていうの?こういうの。わなわなとふるえるっていったいどんなふるえかたなんだろうね。)と、僕に向かってからの平手が飛んできた。ワオ命知らずなのかいきみは(普通の人間なら抹殺決定だよ。君は免除だけどねくどいようだけど)



「ひっ…雲雀恭弥のヘンタイーー!!!!」
「心外だなぁ…君が見せたんだろう?飛び降りる時にね」
「見ても普通は言わない!!女子の下着見て伝えるか、何考えてるんだ馬鹿!!」




真っ赤な顔して、泣きそうな目をして僕を睨む。恐くもないのにね。僕はクスッと笑った。







(雲雀のツンデレ物語!始動!07.04.02)