私と曽良君と芭蕉さんは江戸から北上して奥州地方へ足を踏み入れた。昨日泊まった宿場で芭蕉さんが「わたし此処に行きたいんだよね〜」っていいながら地図に指さした地名はもう忘れたけれど曽良君も何も言わずに頷いていたから何か大切な場所なんじゃないか、とか少し。だけ考えた。アレかな?曽良君の初恋の人でも居るんだろうか。それだったら嫌だ、私それは嫌だ。何が楽しくて好きな人の初恋の人(仮)に会わなきゃならないんだ!!って一晩寝ずに考えてたら芭蕉さんに心配された。うぅ…正直恥ずかしいやら情けないやら………。
なんだかんだ言って私は自分の都合で(思い人の初恋の人に会いたくないとかそう言う奴)予定を変えられるほど偉くないからフラフラしながら二人に付いていった。いつもより休憩が多かったのは二人の優しさだろうか……。なんだか申し訳なかった。





平泉…、芭蕉さんだったか曽良君だったかどちらかが呟いた。それが地名…だっけ?芭蕉さんが指差した地名とは何か違う気がする んだけどな。川沿いを三人でのんびり歩いて金鶏山っていう山(っていうか丘?)をみてまた川を見る。この小さな川が向こうに見える大きな川と一緒になるのか。不思議だ。で、ゆっくり見歩きながら芭蕉さんが急に「わたしちょっとむこうのモンを見てくるよ!!曽良君達はそこにいてね!」可愛らしいオッサンウィンクで走っていったけど私は芭蕉さんが転んだをのこの目で見てしまった。そしてマーフィー君を抱えながらゆっくり歩いていくのも見た。(きっと芭蕉さんはマーフィー君に「やっぱり歩いていこうかマーフィー君。危ないものね」って話しかけたに違いない!!)おっさんだなぁあのひとも。私が芭蕉さんウォッチをしていると曽良君が少し離れたところで何か書いている。あぁそういえば芭蕉さんの度の記録を残しているんだっけ。きっと曽良君は私の思いつかないような文を書いているんだろう。細かくてわかりやすくてはっきりしている。もったいないな、誰かの弟子なんて。充分独立できそうな人だと思うのに。芭蕉さんのこと好きなのかな?尊敬してるのかな毎日いじめてるけど。
突然、そう本当急に私は曽良君から目が離せなくなった。前から放してなかったけど今の私は動けなくなるくらい目が離せなくなってた。うん、。かなしばり…金縛り?っていうのかな?そんなのに掛かったみたいだ。今まで掛かった事なんて無いけどきっと金縛りってうのはこういうことを言うんだ。私の視界に入った貴方の頬。そのきれいな頬を伝う、一筋の水。すぅっ、とすべって地面に落ちた。次から次へと流れる訳じゃないけど、少しずつ、すぅ、すぅっ、て地面に吸い込まれてるみたいに落ちた。水。目が離せない。離したくないきれい、きれいだ。


「何を見ているんですか?」


いつもと同じ曽良君の顔がそこにあった、私は目があって一瞬からだをふるわせる。いつもと何も変わらない。ただ、頬に水が通った後がうっすら見えた(気がした)


「馬鹿みたいですよね。僕も、歴史も。」



貴方と同じです。と続けた曽良君は儚げだった。











落ちるのは貴方の目から溢れる水ですよ。曽良君はそうも言った(気がした)